ここでは、種類株式についてご紹介致します。
まず、おさらいとして株主総会において各議決をえるためには、下記の種類の議決方法が挙げられます。
決議方法(原則) | |
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普通決議 | 議決権過半数の出席&出席株式の議決権の過半数 (通常の決議はこの普通決議で行う) |
特別決議 | 議決権過半数の出席&出席株主の議決権の三分の二 (定款変更の場合はこの特別決議となる。) |
特殊決議 | 半数以上の株主の出席&出席株主の議決権の三分の二
(発行する株式全部に譲渡制限を付す等の場合) |
別段決議 | 総株主の半数以上の出席&総株主の議決権の四分の三(属人的種類株式の議決) |
ここを抑えていないと、総会決議の無効確認の提訴をされるリスクがあります。
当然、株主総会に至るまでの株主招集手続きも抜かりなく行わなければ、これもまた後日に紛争のリスクを十分に秘めているので適正な手続きを心がけましょう。
種類株式(会社法108条)
この種類株式を発行する場合には、 必ず登記しなければなりません。
九つの種類株式があります、(下記、参照)そして組み合わせて活用ができます。
Ex :黄金株等
九つの種類株式(会社法108条)
譲渡制限株式
(本来、自由な譲渡ができる株式について、会社等の承認がなければ譲渡できない株式)
議決権制限株式
(この議決権の行使について、何らかの形で制限が付された株式)
配当種類株式
(剰余金の配当について優先・劣後の条件が付された株式)
残余財産分配種類株式
(会社の解散等、残った財産の整理時にその分配を受ける権利について優先・劣後の条件が付された株式)
取得請求権付株式
(株主が、会社に対して自身の所有する株式を取得するように請求することができる株式)
取得条項付株式
(一定の事由が発生すると、会社のほうから強制的に取得できる株式)
全部取得条項付株式
(株主総会の決議をもって、その株式の全部を会社が取得することができる株式)
拒否権付株式(黄金株)
(株主総会決議等に「No!」と言える権利をもった株式)
役員選解任権付株式
(種類株主総会で役員を選任できる株式)
属人的種類株式(会社法109条)
旧有限会社的な同族会社に向いている。
この属人的株式には登記は不用です、 定款変更手続きのみで問題ありません。
よって、登記簿謄本を閲覧されても、属人的種類株式が発行されているかどうか
がわかりません。それを確認するためには、定款内容を確認するしかないのです。
- 剰余金の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 株主総会の議決権
上記について、定款で株主ごとに異なる取扱いをすることが可能です。
登記簿謄本に記載されないことから、種類株式以上に柔軟で自由な取扱いが可能。
ただし、全株主の同意があるべき株式といえます。
Ex :黄金株、VIP株、ヒーロー株等
定款の記載事例
【属人的種類株式】
EX:ヒーロー株式活用のケース
オーナー社長が信頼できる第三者にヒーロー株を1株譲渡しておけば、オーナー社
長の身に不測の事態が起きても、ヒーロー株主の議決権が激増し、会社のピンチを
救ってくれる。
第○条
株主Bは、株主A(オーナー社長のこと)に下記の事由が生じている間に限り、その有する株式1株につき 1千個 の議決権を有する。
(1) 認知症、事故、病気、精神上の障害などによる判断能力の喪失
(2) 行方不明
(3) その他株主総会に出席して議決権を行使できない事由
2 前項の規定は、株主Aについて当会社の株主総会において議決権を行使する権限を有する補助人、保佐人、成年後見人が選任された場合又は任意後見人との間の任意後見契約の効力が発生した場合には、その効力を失う。
ただし今現在、税務上の評価方法問題があり、明確になっていないリスクあり。特に配当を多額に受ける権利をもつ株式とした場合によっては、類似業種比準価額が高額となり、ケースによっては寄付金の認定課税を受ける可能性もなくはない。
種類株式を活用することによる、その他の効用
(1)成年後見制度編
認知症や行方不明、 ヒーロー株
(上記の定款記載例を参考)
(2)資金調達編
間接金融から直接金融へ
取得条項付種類株式(コール・オプション)
取得請求権付種類株式(プット・オプション)
適正な情報公開の時代→公告方法も官報だけでなくWEB公告も可能となっています。
(3)おまけ
○少人数私募債の活用
少人数私募債とは
50人未満 縁故者 社債一口の最低額が発行総額の50分の1以上
( ex: 一人当たり100万円なら、4,900万円まで)
満期償還期間は、設備資金であれば中長期の3~5年、運転資金であれば短期2~3年
元利金等払いではなく、途中利払いのみで、満期後に全額償還。
利息の税率の違い
会社への貸付金の利息は雑所得となり、確定申告により他の所得と合算して総合課税の対象となるため、税負担が最高で50%となる。
これに対し、社債の利息は利子所得となり20%の源泉分離課税の取扱いとなる。
従って、例えば仮に会社に2000万円の貸付をしてその利息を年利2%の40万円を受け取っていたケースとすると
通常の貸付: 400,000円の税負担 50%→200,000円が税金
少人数私募債:400,000円の税負担 20%→ 80,000円が税金
なんと、差額120,000円の節税となります。